半導体・液晶需要の高まりと共に、
クリーンロボット市場に本格参入
1990年代は「ITブーム」と呼ばれるパソコンなど情報機器の急速普及期を迎え、デジタル化が急速に加速。半導体需要も拡大の一途をたどります。
半導体の高性能化、生産量の大規模化と共に、製造工程の高度化も必至である中、焦点があたったのは「クリーンロボット」でした。
高度な半導体製造工程にクリーンロボット需要が高まる
1990年代の半導体・液晶産業の著しい成長に伴い、半導体製造装置メーカー各社は、大型化するウェハや液晶ガラスを搬送できる性能と信頼性に優れたクリーンロボットを求めていました。これまでの安価なスカラロボットや自社で内製したロボットでは到達できない運動性能と大動作範囲を持つロボットを各社は必要としていたのです。
この時代の要請を受け、川崎重工は1995年に半導体ウェハ・液晶基板搬送に特化したクリーンロボットの開発に着手します。クリーンロボットには、これまで川崎重工が得意としてきた自動車製造工程で使われるようなロボットとは全く異なる技術が必要でした。しかし、これまで培ってきた基本的なものづくりの要素技術を活かし、これまでの半導体製造とは全く異なる技術を用いて開発を続けました。そして1997年には、独自の直動アーム構造を搭載したテレスコピック昇降式水平多関節型のウェハ搬送ロボット「TSシリーズ」、液晶ガラス基板搬送ロボット「TLシリーズ」を発売し、製品化に成功しました。
クリーンロボットの本格生産を整備
「TS・TLシリーズ」によってクリーンロボット市場への本格参入を果たした川崎重工はその後、高速搬送や高位置決め精度、教示の自動化など、多くの顧客ニーズに応えながら、やがて、業界シェアを拡大していきます。そして2000年には、自社工場内にクリーンルームを竣工。より清浄な空間でクリーンロボットを製造できる体制を整えます。2001年には、米国西海岸のシリコンバレーの中心部に位置するサンノゼに、KRIの事務所を新たに開設。世界の半導体需要を牽引する当地にて、クリーンロボットの営業活動を強化します。当時、半導体分野において川崎重工の知名度はないに等しく、米国の半導体装置メーカーの信頼獲得に至るまでの道のりは平坦なものではありませんでした。しかし、顧客の元へ足しげく通い、要望を汲み取り、提案を重ねる――その積み重ねにより、ロボット単体のみならず、周辺機能を含め、それらをハイレベルで集約したトータルソリューションの提供を実現しました。