Case04 従業員を重労働から救え! アメリカ・フロリダ州造園資材業者の場合

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産業用ロボットのニーズが一段と高まっている。一般社団法人 日本ロボット工業会の統計データによると、2021年1月〜3月期は受注額が対前年同期比43.2%増、生産額が22.1%増と、それぞれ大幅なプラス。四半期ベースでは過去最高の数字を記録したという。労働力人口減少や高齢化、消費者行動の変化、さらにコロナ禍がもたらした新様式といった要素が絡み合いながら、ロボットとオートメーションはかつてないほどのスピードで社会に浸透し始めている。ロボットがどんな場所でどんな仕事をしているのか。その具体的な例を明らかにすべく世界中の現場を巡る本連載。これまではペットフード工場やバッテリーサプライヤー、宇宙航空部品メーカーに潜入し、人手不足や単調な作業、品質安定化など、それぞれの現場が抱えた悩みをロボットが解決する様子を追いかけてきた。そして今回、アメリカ・フロリダから届いたのが「社員を守りたい」という切なる声。果たして現地で何が起こっているのだろうか。早速XYZ取材班は、マイアミへと飛び立ったのである。

コロナ禍で需要が伸びたガーデニング製品

マイアミビーチからクルマで内陸に約30分進んだ辺り、マイアミ国際空港のすぐそばに、メドリーという街がある。総面積は僅か11平方km。ちょうど文京区と同じくらいの広さである。ラテンアメリカやカリブ海にほど近いマイアミ都市圏に属するメドリーには外国出身の居住者も多く、キューバ生まれの人口密度がアメリカで9番目に高いと言われている。通りを歩いていても、聞こえてくるのは圧倒的にスペイン語が多い。

その街に拠点をおく「フロリダ ウッド リサイクル社」の倉庫の一角、ソファテーブルに向かい合ってコーヒーを飲んでいる二人の男が居る。白いポロシャツにコットンパンツ、良く日焼けした頼もしい腕にハミルトンのウォッチをつけたのが社長、ジャージー地の涼しげなジャケットに軽めのニットタイを合わせているのが取引先の営業担当のようである。

営業担当:コロナ禍でガーデニングがちょっとしたブームになっていましてね。ほら、皆さん、自宅で過ごす時間が増えていますから。この流れに便乗して、我々ももっと販売数を増やしていきたいんですが……。

社長:そう言われても、うちは現状で一杯一杯なんですよ。なにしろ1日8〜9000袋をパレットに積み上げていくのはかなりの重労働だ。いくら若いスタッフだって、これ以上仕事を増やしたら体が参っちまう。

この会社で扱っている製品は、観葉植物や庭の土を覆うチップ材。ガーデニングの世界で「マルチング」と呼ばれる作業に用いるもので、土面を覆うことで雑草や乾燥を防止したり、土中を適温に保つのに役立つ。

営業担当:おや、あの壁のポスターはなんですか。……えーっと、「Prevenga caidas」?

社長:あれは「転落に気をつけよ」、って注意書き。スペイン語で書いてあります。うちの従業員は外国出身が多いんでね。商品の袋を詰めるパレットの高さが8フィート(約2.4m)あって、高所で手積み作業をしなくちゃいけないからいつも危険と隣り合わせなんです。

電気代も抑えられる省エネ型パレタイズロボット

Agent K:そういう危険な作業こそ、ロボットが代わりに引き受けましょう!

営業担当&社長:(びっくりして顔を見合わせる)

Agent K:突然お邪魔して失礼。私はロボットによるソリューションで皆様の仕事を助けるために、世界中をパトロールしているAgent Kと申します。

社長:ロボットならもう使っているよ。ほら、商品のチップ材を袋に詰めて、袋の口をシールして密封するまでは機械に任せてるんだ。

Agent K:でしたら、その袋をパレットに積み込んで出荷するまで、一連のラインを全て自動化してはいかがですか?

社長:今は荷積み工程だけでも2人の従業員がかかりっきりだ。ロボットにやってもらえるんだったらそんなに有り難いことはないけど、これ以上機械を増やしたら電気代がちょっと心配だなあ。

Agent K:でしたらこちらがオススメですよ!

Agent K:これは川崎重工が造った新世代のパレタイズロボット「CPシリーズ」。パワフルでスピーディな搬送能力に加えて、業界初の電力回生機能を標準搭載しています。

社長:電力を回生? 電気自動車とかハイブリッド車みたいなものかい? ブレーキのときに捨ててしまう運動エネルギーを、電気エネルギーとして回収して有効活用するっていう。だったらうちの車にもついてるよ。燃費が良くて助かってる。

Agent K:おっしゃる通り。作業時の減速エネルギーを電力として再利用する「小型・省エネコントローラ」を搭載することで、消費電力量を30〜40%削減出来るんです。燃費ならぬ、“電費”に優れたロボットでしょう?

繁忙期の需要増加にも対応可能

営業担当:それで、ラインを自動化したらどれくらいの出荷能力が期待出来るんです?

Agent K:全工程の概要はこうです。まず袋詰めした商品を、一定の形状に整えるコンディショニング用のコンベア、そしてパレタイズロボットがピッキングしやすい位置間隔に商品を配置するペーシングコンベアを用意。そこからロボットは、プログラムされたパターンに従って商品をピックアップし、専用の荷積みボックスに積み重ねていきます。ボックスの高さは4フィート(約1.8m)、そして8フィートの2種類に調整出来るようになっているので、半分積み終えたら最上段まで持ち上げて、残りのボックス一杯まで詰め込む、という2段構えになります。このシステムなら、毎分最大22袋までの荷積みが可能で、平均18袋/分で稼働させたとしても、9時間で9000袋を悠々クリア出来ます。

営業担当:繁忙期の春先になると、本当はその2倍くらいの商品が必要なんですが……。

Agent K:操作を担当する従業員さえ居てくれれば、パレタイジングロボットは倍の18時間だって働き続けますよ。

社長:これなら、従業員がきつい反復作業から解放されるし、高所でのリスクも無くなるなあ。

営業担当:いつも社員を引き留めるのに苦労していた社長のストレスもね。

Agent K:ラインの自動化は自動車、電子機器以外の業界でも拡大しています。御社のような造園業界ではまだまだ珍しいですが。

社長:新しいことに挑戦するのは嫌いじゃないんだ。貴方は、そうやってあちこちの現場にロボットをプロデュースして回っているのかい?

Agent K:プロデュースするだけではありません。我々は、いつも働く皆様にとってのパートナーなんですよ。

社長&営業担当:「我々」って、あんた、もしかしてロボ……。

Agent Kはひとつのミッションを終えたら、急いで次の現場へ向かわなくてはならない。そして今日も世界を飛び回っている。「人がやりたがらない」「人には出来ない」仕事を黙々とこなすロボット。そして「ロボットには出来ない」仕事に従事する人々。両者が互いの得意分野を活かし合いながら、より効率的で健全な仕事が行える社会が1日も早くやってくることを願って。

[付記]
このストーリーは、川崎重工における事例に基づいたフィクションです。実際の現場では、「軽量で大型、かつ滑りやすいビニール袋を規定のパレットへ正確に荷積みする作業が困難」であり、かつ「大型ビニール袋を積み重ねるという肉体労働を長時間反復する」ことと「高所での作業」がもたらす従業員の健康面のリスク、さらに「過酷で単純な作業のため従業員が定着しない」という課題も抱えていました。それらを解決するために、川崎重工製の高速パレタイジングロボットと、米コロラド・デンバーのロボットシステムインテグレータ「Nova Automation」による自動パレタイジングスタックボックスを組み合わせ、荷積みプロセスを完全自動化。最大18時間/日、最大22袋/分、平均18袋/分の作業を可能にしました。毎分18袋の荷積みは、2人の労働者の仕事量に相当。現在自動化ラインは1日9時間で、繁忙期は最大18時間稼働していて、同社は他にある2つのラインでも自動化を検討中とのことです。

今回のケースで登場した川崎重工製品については、以下をご参照ください。

高速パレタイズロボット「CPシリーズ」

物流工程の箱物、袋物などを対象ワークとするパレタイジング(荷積み)用垂直多関節ロボット。可搬質量180kgの「180L」、300kgの「CP300L」、500kgの「CP500L」、700kgの「CP700L」をラインナップする。すべての可搬質量で業界最速の搬送能力を実現しているのに加え、広い動作範囲も特徴。回生エネルギー機能を備えた小型・省エネのコントローラにも対応している。

高速パレタイズロボット「CPシリーズ」