Case01 ペットフードを素速く箱詰めせよ! アメリカ・ウィスコンシン州工場の場合

アニメの中で人を救うロボットがヒーローならば、労働の現場を助ける産業ロボットは現実世界のスーパーヒーローだ。人手不足、効率化、コスト削減、品質管理−−世界中の「働く現場」で、日夜仕事に勤しむロボットたちは、多くの人々の悩みを解決してきたのだから。

ところで、“彼ら”は一体、普段どんな仕事を行っているのか。果たして誰が、どんなときに“彼ら”を必要としているのか。

我々XYZ取材班は、リアルな姿をキャッチするべく、世界各地の仕事場に潜入。日々ミッションに挑むロボットの仕事ぶりを追跡することにしたのである。聞けば、産業の現場を救うべく、Agent Kなる謎のキーマンが現れるという噂も。彼は困っている仕事人たちにロボットによるソリューションをもたらすべく、日々世界中を飛び回っているとか、いないとか……。

ここはアメリカ中西部、ウィスコンシン州。ミシガン湖、スペリオル湖、そしてミシシッピー河に三方を囲まれ、豊かな緑を湛える景観から「アメリカのスイス」とも呼ばれる美しき土地だ。一方で、地理と流通の便、資源に恵まれた屈指の“工業州”でもあり、多くの工場や工房が軒を連ねている。

そんなウィスコンシン州ウォーケシャーで、ひとり頭を悩ませている人がいた。

オーナー:いやはや困った。どうしたもんかな。

彼が営んでいるのは、ペットフードを扱う工場。ドライタイプのフードを製造し、それを密閉した袋に封入して納品するのが日々のルーティンのようだ。

オーナー:ありがたいことに、ここのところ注文はひっきりなしだ。製造のほうも順調なんだけど、こっちがなあ。

悩めるオーナーが見つめる先には、商品の袋が山となり、箱詰めされるのをいまかいまかと待ちわびている。どうやらこの工場では、箱詰め作業のスピードアップが喫緊の課題となっている模様。一口に「袋」といっても、大容量から小分けのものまで、サイズも重量もまちまち。彼の工場ではそれを納入先の要望に合わせて、サイズ別の段ボール箱に定められた個数分梱包して出荷しているのだ。

単純なれど、複雑な箱詰め作業。ここにこれまで多くの人力を割いてきたのだが……。

オーナー:これ以上箱詰めラインを拡張する余裕は、人員の面でもスペース的にも無い! それにこのご時世、省人化をなおざりにしては工場は立ちゆかんし。ううむ、困った困った。

Agent K:省人化、自動化、効率化にお悩みならば、ロボット導入を考えてみては?

オーナー:ちょっとちょっと、あんまり驚かせないでくれよ。一体誰なんだアンタは。

Agent K:私はあなたの「親愛なる隣人」ですよ。

オーナー:なんだかどこかで聞いたヒーローの台詞みたいだけど……。しかしねぇ、ロボットっていったってうちの工場は小さいし、そんなにコストもかけられやせんのだ。

Agent K:それだったら、工場の一角で、コンパクトに「セル方式」で生産するという手があります。「セル方式」とは、小さなエリア内で一定の作業工程をまとめて完結する方式。一つ一つの作業区画が、あたかも細胞(セル)のように自律的に活動するイメージから、そう呼ばれるようになったのです。

オーナー:だけどもこんな小さなスペースに人を詰め込んだところで、作業量は増えないじゃあないか。

Agent K:作業するのは人じゃありません。ロボットです。ほら!

Agent K:コレは垂直多関節ロボット(A)。土台の上に、空間を自在に動く一本のアームを取り付けた、もっとも一般的な産業用ロボットの一種です。このアームの先にハンドや作業工具などのツールと呼ばれる様々なオプションを取り付けることで、色々な作業に従事させることができるんです。

オーナー:なるほど。人間の腕みたいに関節を軸にして動く仕組みなんだな。ハンドにもいろんな種類があるね。2本指でモノを掴んだり、磁石がついてたり……。

Agent K:今回扱うのは柔らかなビニル製パッケージだから、アームの先に「吸着ハンド」をつけましょう。こうやって、このバルブ部分で空気圧を制御することで、対象物を自在に脱着することができるんですよ。

オーナー:ああ、自動車工場で窓ガラスを取り付けるときなんかに使われてるロボットとおんなじだな。テレビで見たことがあるよ。あっちは人間よりずっと大きかったけどね。

Agent K:自動車工場で働く垂直多関節ロボットの可搬質量は百キロ越えですからね。ペットフードのパッケージであれば、そんなに力は必要ないから、コンパクトなロボットで充分なんです!

オーナー:なるほど。それじゃああとはロボットにお任せすればいいってことかい?

Agent K:ロボットに効率よく働いてもらうには、“目”が必要です。いわゆる視覚センサシステム(B)と呼ばれるもので商品の位置を検知すれば、正確な距離を見極めてピックアップから箱詰めまでをスムーズにこなしてくれるんです。

オーナー:だんだんと分かってきたよ。でも、箱詰めしたい商品や、ひとつの箱に詰める数、箱のサイズはその時によって変わってくる。そんな時はどうすりゃいいんだい。

Agent K:プログラミングによって作業内容を変えることができる。その柔軟性こそが産業用ロボットの特色です。ロボットに作業を行わせるために、その作業を実現する動作をなんらかの方法で教え込むことを「ティーチング(教示)」と言いますが、それにもプログラムを直接書き込んだり、動作を直接記憶させたりと色々な教え方があります。今ではAIを使ったティーチング、なんていうのもあるんですよ。

Agent Kのアドバイスに従って“自動箱詰めライン”はあっという間に完成。垂直多関節ロボットは、アームを器用に動かしてひょいとパッケージを取り上げては箱に詰め、また次の商品へ。一糸乱れぬ単純作業が延々と続けられていく。

オーナー:ふうむ。これならオペレーターさえいれば充分だな。今まで箱詰めをお願いしていたスタッフには、別の仕事をお願いすることができそうだ。

Agent K:溜まっていた商品の山もどんどん減っていますから、スペースに余裕もできましたね。

オーナー:だったら前から挑戦してみたかった新事業をこの機会に始めてみることにするか!それでまた悩み事ができたら、今度も助けにきてくれるかね?

Agent K:もちろんですとも!覚えていてください。僕はいつだってあなたの側にいるってこと。

Agent Kは今日もどこかでロボットを導入し、働く人々を救っているという。いつかはあなたの住む街にも、彼がやってくる……かもしれない。

[付記]
このストーリーは、川崎重工における事例に基づいたフィクションです。顧客の希望は「包装された食品製品の箱詰めプロセスの自動化」。実際の現場では、コンベア脇に2台のRS007 Lロボット+吸着ハンドを設置。K-VFinderビジョンシステムとコンベア追従機能を使って、異なるサイズの箱や製品形状に対応するように設計された移設可能なセル(ワーキングスペース)を組み合わせることで「毎分80袋」の箱詰めが可能に。作業員数を3人少なくすることができ、人員の再配置が可能になりました。

今回のケースで登場した川崎重工製品については、以下をご参照ください。

A)RS 007

電気・電子業界、食品業界を中心とした小型ロボット導入ニーズの高まりを受けて開発した、最大可搬質量7kgの小型6軸垂直多関節ロボット。リーチ長は730mmとコンパクトな動作範囲と、高速動作が特徴。930mmのロングタイプもご用意。

RS 007

B)K-VFinderビジョンシステム

外付けの画像処理用PCを使用した2次元ビジョンシステム。コンベア上を流れるワークを、精度よくピッキングすることが可能。認識したワークを最大8台のロボットに分配できる。

K-VFinderビジョンシステム

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