ヒューマノイドロボットとはなにか―歴史、そして開発の最前線を探る

科学の子、鉄腕アトムの誕生から約70年。人々は自分達と同じ姿をした人型ロボットが「みんなの友達」になる未来を、長らく夢見てきました。そして今、産業界では人型ロボットヒューマノイドロボットの研究開発が加速しています。科学の子が人間社会と共存する日は、現実に迫っているのかもしれません。人型ロボットはどこから来て、どこへ行くのか。その足取りを追いかけてみましょう。

空想の世界のロボット

ロボットとひとくちにいっても、学術、産業、芸術、それぞれの世界でその定義は異なります。とりわけ私たちにとって身近なのはサイエンスフィクション(SF)の世界に住むロボットではないでしょうか。

そもそもロボットという言葉は、チェコ語の「robota(骨の折れる仕事)」に由来しているといいます。チェコスロバキアの作家、カレル・チャペックが1920年に書き上げた戯曲『R.U.R(Rossum’s Universal Robots)=ロッサム世界ロボット製作所』に登場したのが初出、というのがもっぱらの説。人間のあらゆる労働を肩代わりしてくれる人造人間「ロボット」に、感情を与えたがために反抗心が生まれ、ついには人類が悲劇に追い込まれる……そんな風刺の効いた物語は今読んでも古さを感じさせません。

『R.U.R』の中に登場するロボットはタイプライターを打ったり、帳簿をつけたり、肉体労働に従事する、いわゆる人型ロボットです。手足があって顔があり、歩き、走り、喋り、戦う。躍動感あふれる人型ロボットの物語は大変な人気を博し、出版からわずか3年で30ヵ国語に翻訳され、ロボットという言葉は瞬く間に定着していったようです。

戯曲『R.U.R』の一場面 右から2番目と3番目がロボット
▲戯曲『R.U.R』の一場面 右から2番目と3番目がロボット

以降、フリッツ・ラング監督の『メトロポリス』(1927年)、アイザック・アシモフの『われはロボット』(1950年)、手塚治虫の『鉄腕アトム』(1952年)、『スター・ウォーズ』(1977年)シリーズのC-3POなどなど−−2次元の世界から私達に夢を与え続けてきた人型ロボットは、3次元の世界でも着々と進化を遂げました。

現実世界のヒューマノイドロボット

1920年代後半、アメリカと英国、日本で3体のヒューマノイドロボットが誕生しました。アメリカの総合電機メーカー、ウェスティングハウス・エレクトリックは家電製品を遠隔操作する「Televox(テレボックス)」を、英国のW.H.リチャーズと航空機エンジニアのアラン・レッフェルは立ったり座ったりできる「エリック(Eric)」を、そして日本の生物学者・西村真琴は、表情を七変化させ文字を書く「学天則(がくてんそく)」を発明。2次元の世界から3次元へ。ここからヒューマノイドロボットは現実世界での成長をスタートさせました。

Televox(テレボックス)
▲Televox(テレボックス)
東洋初のロボット「学天則」と開発者の西村真琴(左)
▲東洋初のロボット「学天則」と開発者の西村真琴(左)

ここ40年の間には、日本だけでも早稲田大学の「WABOT(ワボット)」やホンダの「ASIMO(アシモ)」、ソニーの「QRIO(キュリオ)」、富士通の「HOAP(ホープ)」、国立研究開発法人産業技術総合研究所とカワタロボティックスの共同開発による「HRP」シリーズ、近藤科学の「KHR」シリーズなど、多種多彩なヒューマノイドロボットが誕生しています。ヒト型ならぬ愛玩動物を模したイヌ型ロボット、ソニーの「AIBO(アイボ)」まで登場しました。

「歩ける」「走れる」「踊れる」など、ヒューマノイドロボットは長らくパフォーマーとして人々の笑顔を誘う存在でしたが、近年は人と向き合う対話型も続々誕生。2014年にソフトバンクが「Pepper(ペッパー)」を、2015年にはヴイストンが「Sota(ソータ)」を、2016年にはシャープが「ロボホン」を立て続けに発表。いずれも人間の姿をカリカチュア化した、愛嬌あふれるコミュニケーション型サービスロボットとして開発されています。これらのロボットは現在、主にエンタテインメント向けで活躍しています。

世界初の量産ヒト型ロボット「Pepper」
▲世界初の量産ヒト型ロボット「Pepper」

いっぽうで「人間に代わって骨の折れる仕事をする」という本来の任務をこなすヒューマノイドロボットの台頭も、いよいよ現実味を帯びてきたのです。

ヒューマノイドロボット最新事情

今、世界中で最先端の技術を応用したヒューマノイドロボットが続々と誕生しています。アメリカのボストン・ダイナミクスはDARPA(国防高等研究計画局)の支援のもと、四足歩行ロボット「SPOT」やヒト型ロボット「Atlas」などを開発。Atlasがパルクールというアクロバティックなスポーツを披露する動画は、YouTubeで公開されるやいなや、驚異的な視聴回数を記録しました。

モビリティの世界では、トヨタが「全身遠隔操縦型」と呼ぶ「T-HR3」を発表。骨格型の操縦システムを装着した操縦者の動きやトルクを計測して送信することでヒューマノイドロボットが同じ動作をするという、アバター(分身)ロボットです。T-HR3の研究を通して、トヨタはバーチャルな移動サービスという、まったく新しい体験を創造しようとしています。また、ヤマハ発動機はヒト型自律ライディングロボット「MOTOBOT」を開発。モトGPの世界王者バレンティーノ・ロッシを打ち負かすことを目標に生み出されたMOTOBOTですが、将来的には限界状況での走行性能を試したり、定量的な走行データを取得するなど、“テストライダー”としての仕事も期待されています。

ヒューマノイドロボットの社会実装に向けて

今、産学ふくめ、ヒューマノイドロボットの研究をしている団体は数多くあります。バク転をしたり、演奏をしたり、料理をしたり、パフォーマンス上手なロボットはメディアでも注目を集めています。一方で、「人間のあらゆる労働を肩代わりする」という目的において、実用化にもっとも近いところにいるヒューマノイドロボットが、川崎重工の「Kaleido(カレイド)」です。身長約180cm、体重約85kg、体型もチカラも成人のそれに極めて近い、人間社会に即したスペックをもつのが特徴です。

川崎重工の「Kaleido(カレイド)」
▲川崎重工の「Kaleido」

このようなヒューマノイドロボットは、例えば災害現場など、人間が近づけないような環境で人間に代わって何らかの作業をしなければならない場合での活用が期待されます。人間と同じ体格で同様の動きができるヒューマノイドロボットであれば、人間が使うために考案された防護服や道具、乗り物などをそのまま使用することができます。予想がつかないどのような場面でも、活躍できる可能性を秘めています。当たり前のことですが、世の中の環境は人間が生活できるように、人間が作業できるように作られています。ヒューマノイドロボットは、これらの環境を大きく変えることなく活躍できる、究極のロボットなのです。

ものづくりの現場を知り尽くした川崎重工が、満を持して生み出すヒューマノイドロボットの掲げるコンセプトは、「倒れても壊れない、万が一壊れても修理しやすい」という総合的なロバスト性(耐久性)を備え、かつ、成人に極めて近い体型を持ったロボットであることです。これは、実社会で真に活躍することを本気で考えているからこそのコンセプトと言えるでしょう。365日、24時間活動し、耐久性や信頼性、整備性、汎用性も含め、毎日使うための「現実的な課題」をクリアしなければ、人間に代わって働くヒューマノイドロボットにはならない。−−それが川崎重工のロボットに対する姿勢です。

産業用ロボット業界を50年以上にわたってリードしてきた川崎重工が、蓄積してきた技術とリソースを惜しみなく投じて開発するヒューマノイドロボット、「Kaleido」。今はまだ進化の途上にありますが、一歩一歩着実に前進しているのはまぎれもない事実です。「彼」が社会に実装される日はそう遠くないのかもしれません。

【コラム】「ヒューマノイド」「アンドロイド」「サイボーグ」の違いって?

ヒューマノイド
human(人間)+-oid(のような)を組み合わせた合成語。一般的にヒト型ロボットの総称として使われる。SFでは映画『スター・ウォーズ』シリーズのC-3POが有名。広義ではアニメ『機動戦士ガンダム』(1979年)のモビルスーツや『機動警察パトレイバー』(1988年)のレイバー、『新世紀エヴァンゲリオン』(1995年)のEVAなども含む。
アンドロイド
ギリシャ語で人を意味するandroと-oid(のような)を組み合わせた合成語。androは男性の意味も含むため、女性型については同じくギリシャ語で女性を表すgynに-oidを組み合わせてガイノイドと呼ぶこともある。ヒューマノイドの中でも限りなく人間に酷似した姿をもつ。SFでは映画『ブレードランナー』(1982年)のレイチェルが有名(作中ではアンドロイドをレプリカントと呼ぶ)。
サイボーグ
cybernetic(人工頭脳学の)とorganism(有機体)の合成語。身体の一部分を機械化するもので、失った部分、弱体化した機能を補完する場合と、能力を通常より高めるために機械化する場合がある。SFでは映画『ロボコップ』(1988年)、TVドラマ『仮面ライダー』、石ノ森章太郎の漫画『サイボーグ009』が有名。
【参考文献】

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