XYZ あなたの世界にロボットをプラスXYZ あなたの世界にロボットをプラス

人とロボットが共存する社会を見据えて―カワサキのヒューマノイド開発が目指す未来

少子高齢化による人口減少や頻発する災害対応を見据え、社会が期待するロボットの役割は広がっています。
産業界を中心に注目されているのは「協働ロボット」。人と同じ空間で作業できる共存型や、人とロボットが同じ作業を連携しながら行う協調型などのタイプがあり、これまで人が行ってきたつらい作業をロボットが肩代わりしたり、ロボットが人をサポートしながら作業するなど、ロボットと人との新しい働き方や社会のあり方が少しずつ実現しはじめています。

ロボット事業創業50年を超える川崎重工は、工場の製造ラインで使用される産業用ロボット分野をリードするとともに、協働ロボット分野にも注力しています。2本の腕を持ち、人と同じ空間で作業できる人共存型双腕スカラロボットのduAro(デュアロ)や、遠隔からロボットを操縦することで人とロボットの協調作業を可能とするロボットシステム・Successor(サクセサー)は、人とロボットの新しい共存のあり方を実現しています。

その川崎重工が未来を見据えて取り組むのが人型ロボット(ヒューマノイドロボット)の開発。
「Kaleido/華麗人(カレイド)」と名付けられたヒューマノイドロボットが、初めて披露されたのは2017年。以来、災害や介護の現場など、人が暮らす社会での活躍を見据え、実用化に向けた開発が日々進んでいます。

12月18日(水)~21日(土)に東京ビッグサイトで開催される「2019国際ロボット展」で、その進化が披露されるとのこと。それに先駆け、本記事では、川崎重工がヒューマノイド開発に取り組む意義や「Kaleido」にかける想いを紹介していきます。

Kaleido

川崎重工が開発するヒューマノイドロボットとは

川崎重工は50年の歴史を持つロボットメーカー。工場の製造ラインで使用される産業用ロボットを主に手掛ける同社が、なぜヒューマノイド開発に取り組むのか。「Kaleido」の生みの親でもある、川崎重工の精密機械・ロボットカンパニープレデント・橋本康彦氏にお話を伺いました。

橋本康彦氏

「今、日本のヒューマノイド開発は、残念ながら海外よりも遅れています。それはなぜか。研究者に話を聞くと、研究時間の多くをロボットの修理に割いているというのです。

研究者は倒れないロボットを作ろうとします。しかし、子育てと一緒で、『危ないことはしてはいけません』とジャンプをさせてもらえなかったら、いつまでもヒューマノイドはジャンプできません。

しかし、簡単には壊れないハードがあればチャレンジできる。ケガをしても治してくれる人がいれば、ロボットにも安心してジャンプさせられます。我々が頑強なヒューマノイドロボットを提供することで、チャレンジしてこなかった風土を変えたい。ブレイクスルーするような環境をつくっていきたいですね」(橋本氏)

産業用ロボットの世界で5本の指に入るリーディングカンパニーである川崎重工。これまで製造ラインを止めないために、壊れない、長く使えるロボットを提供してきたノウハウが、ここで生かされています。

研究者にとっても、ロボットが「転んでも壊れない」ことは研究を進める上で非常に重要です。
共同研究を行う東京大学・稲葉雅幸教授の目線から見た堅牢なハードウェアの重要性や、川崎重工と東京大学の共同研究のきっかけは、以下の記事で特集しています。合わせてご覧ください。

ヒューマノイドは、人と共存するロボットの究極形

では、私たちが暮らす社会でヒューマノイドと共存する未来が実現したら、ヒューマノイドは私たちの生活にどのようなメリットをもたらしてくれるのでしょうか。

橋本康彦氏

「既に社会で活躍している産業用ロボットは、製造ラインや作業台の上という限られた環境下で、緻密な作業を行うスペシャリストのような存在です。一方で、人が暮らす環境は日々変化しています。

ロボットが人の暮らす社会で役に立つには、人が行ける場所に行けないといけない。そのため等身大の成人男性サイズにこだわっています。

加えて、自分と同じ重さを持ち上げられることも重要です。人間は、一瞬であっても自分と同じ重さを持ち上げることができます。これができると、ロボットは人と同じ作業ができるようになる。

例えば災害対応や介護などです。災害時には、2次災害の恐れのある危険な環境でも救助活動をできる。24時間サポートが必要な介護の現場では、ロボットが介護をサポートすることも可能になるでしょう。そうなると、介護をする側もされる側も負担が軽減されます。人間が行うとつらい、大変な作業をロボットが担えるようにしたいと考えています。

建物や街は人間の身体を中心に設計されています。これからロボットが活躍の場を広げ、人と共存していく――。そのためにロボットがあるべき姿の終着点、それが人の形をしていること、つまりヒューマノイドです。人と同じ形をしていることで、ロボットは多様な環境下であっても、汎用的に作業をすることができます。

現在、産業界からもヒューマノイドに期待する多くの声をいただいています。これまでは、ある特定作業専用のロボットのために、個別に作業をシステム化するなど環境を整えていたのが、ヒューマノイドならば白衣を着れば病院で働けるし、防火服を着れば消防士にもなれるのです」(橋本氏)

では、現在の「Kaleido」はどこまで理想の姿に近づけているのでしょうか。

Kaleido

「これまでもさまざまな場所で『Kaleido』をお披露目し、皆さんにワクワクや感動を提供できる段階にはたどりつけたと感じています。今世界にあるヒューマノイドの中でも、かなり高いレベルであることは間違いありません。

ただ、本当に人の役に立つロボットにしようと思えば、まだスタート地点に立ったにすぎません。
川崎重工としては今後もしなやかで頑強なロボットのハードを追求し、進化を続けていきます。各利用シーンに対応したアプリケーションの開発にあたっては、世界中の研究者の力を借りながら、ヒューマノイドを育てていきたいと考えています。

『2019国際ロボット展』では、人の役に立つ利用シーンの一例として『Kaleido』が災害救助を行うデモンストレーションを実施します。是非、世界中の人々に『Kaleido』の持つ可能性に興味を持ってもらいたいですね」(橋本氏)

チャレンジできるプラットフォームとして進化を続けるヒューマノイドロボット。実用化に向けた活躍イメージが膨らむパフォーマンスを見に、「2019国際ロボット展」の会場(※)に足を運んでみてはいかがでしょうか。

※川崎重工の出展場所は東京ビッグサイト・青海展示棟「Bホール30」です。

2017年の初披露から現在に至るまでの、ヒューマノイドロボットの機能的な進化については、以下記事でご紹介しております。ぜひご覧ください。

その他の記事を読む