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ロボットの世界大会「World Robot Summit」が日本の未来をつくる

2020年の東京オリンピックまで残りわずか2年。着々と準備が進む東京オリンピックですが、時を同じくして、もう1つの国際的な大会が日本で開催されることをご存知でしょうか。

それがロボットの世界大会「World Robot Summit(ワールドロボットサミット)」(以下WRS)です。
主催者は経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)。これまでもロボットの国際大会は開催されてきましたが、国が主体となって開催する大会はWRSが初めてです。

「人間とロボットが共生し、協働する社会の実現」をコンセプトとする同大会。ロボットの競技会や最新技術の展示会、各種イベントが行われます。なかでも目玉の競技会では、世界中から集まった優秀なロボットが難易度の高い課題にチャレンジ。人間のオリンピックと同じように、白熱した競争を見ることができます。

WRSの競技会は、「ものづくり」「サービス」「インフラ・災害対応」「ジュニア」の4つのカテゴリーで実施されます。ものづくり部門は、産業用ロボットが素早く製品を組み立てる競技。サービス部門は、家庭内の作業支援や、コンビニエンスストアの業務を自動化する競技。インフラ・災害対応部門は、プラントでの日常点検や、トンネル災害での人命救助など。そしてジュニア部門は、19歳以下の子ども向けのイベントです。

2020年の本大会に先立って、2018年10月にはプレ大会が実施されます。来月に迫るプレ大会を前に、WRSの概要や開催の背景、競技会実施に向けての想いなどを、ものづくり部門の競技委員長を務める横小路泰義氏(神戸大学大学院 工学研究科 教授)に話を伺ってきました。

World Robot Summitとは?

WRS2018は今年の10月17日〜21日、東京ビッグサイトで開催されます。競技会(World Robot Challenge)と展示(World Robot Expo)が行われ、世界のロボットの叡智が集結する一大イベントです。

開催の背景にあるのは、急速に進む少子高齢社会でのロボット活用促進です。日本は今、少子高齢化が急速に進んでいます。今後生産年齢人口が確実に減少していく以上、日本の社会を維持するためには、様々な分野で生産性を向上していく必要があります。そこで、不足する労働力を補い、経済成長を牽引する担い手として、ロボットのさらなる活用が期待されているのです。

安倍晋三首相は2014年5月、フランスで開催されたOECD閣僚理事会の基調演説において、「ロボットによる新たな産業革命(=ロボット革命)を起こす」ことを宣言。ロボット技術の活用をさらに推進し、製造業やサービス部門の生産性を向上、日本をロボット活用のショーケースとする考えを明らかにしました。

ロボット革命の実現に向けて、2015年1月には「ロボット新戦略」を策定。この中で、(1)ロボット創出力の抜本的強化、(2)ロボットがある日常の実現、(3)世界をリードするロボット新時代への戦略、という3つの柱が示されましたが、その具体的なアクションの1つとしてWRSの開催が盛り込まれています。

横小路教授はWRS開催の意義について、次のように語ります。

「WRSの大きな目的は、ロボットの社会実装を加速させることです。私が担当しているものづくりカテゴリーでは、10年後、20年後のロボットの在り方を、競技を通じて考えていくことを目的にしています。今後、ロボットは汎用性をさらに高くして、誰でも簡単に使えるようにする必要があり、WRS2018の開催はその第一歩。

これまでもロボットの国際大会は開催されてきましたが、従来の国際大会が研究者向けのものが多かったのに対して、WRSは広く一般のお客様も楽しめるものになっています」(横小路教授)

日本のロボット産業の課題

日本は「ロボット大国」と呼ばれているものの、現状、ロボットの普及は大規模な量産工場が中心です。今後、人手不足が深刻化していくにつれ、従来人手作業が当たり前だった領域でもロボットの活用が必要になってきます。

しかし、現時点では、ほとんどのロボットは導入ハードルが高いと言います。

「今のロボットの多くは、単体で購入してすぐに使えるわけではありません。現場に合わせたインテグレーションが必要で、これが中小企業によるロボット利用のハードルとなっています。導入コストも、インテグレーションが占める割合が少なくありません。ロボットを購入したらすぐに動かせて、究極は作りたいものの情報を与えれば、どんな現場でも簡単に稼働させられることが理想です」(横小路教授)

横小路教授は、ロボットハンドの専門家として、長年研究を続けられています。それでも、人間の手のような器用で汎用性の高いロボットハンドを生み出すことは難しいと言います。ロボットハンドのように、汎用性が低く、簡単に使えない……これが、多くのロボットに共通する、導入にあたっての大きな課題となっています。

「私はよく、システムインテグレーションの難しさをラジカセとオーディオセットの例えで説明します」と横小路教授。

「ラジカセは、コンセントに電源を繋げばすぐに使える。しかしオーディオセットは、CDプレイヤーやスピーカーなど複数の機材を専門知識を基に組み合わせる必要がある。現状のロボットは、このマニア向けのオーディオセット。一般に普及させるには、これをスイッチ1つですぐ動くラジカセのようにするのが理想ですが、少なくとも誰でも簡単に用途に応じた適切なオーディセットが組めるようにしていく必要があります」(横小路教授)

「アジャイル・アンド・リーン」を実現する考え抜かれた競技

そのためのキーワードとして、横小路教授が重視するのが「アジャイル・アンド・リーン」。迅速(agile)で無駄のない(lean)ロボット開発の促進を目指し、ものづくり部門の競技を設計したそうです。

WRS2018のものづくり部門の競技で行うのは、下の写真のようなベルトドライブユニットの組み立て。

このベルトドライブユニットの組み立ては、ロボットには高度な作業です。現在のロボットは位置制御がベースとなっていますが、ベルトのような柔軟部品は、掴むとすぐに形が変わってしまうため上手く扱うのが難しいのです。

競技ではまず、部品を作業ボードの指定位置に組み付ける「タスクボード」という作業を行います。これで組み立てに必要な基本的な能力を評価します。次のステップとなる「キッティング」という作業では、組み立てに必要な部品をトレイに集めます。その後、上の図のような作業台でロボットがベルトドライブユニットの組み立て作業を行います。

さらに、大会では「サプライズパーツ」も用意。この部品は、直前にならないと公表されないため、事前に動作を作り込んでおくことができず、また治具を用意しておくことも難しく、現場ですぐに対応する能力が求められます。組み立て作業は「アジャイル・アンド・リーン」の取り組みに対して審査員の評価ポイントが加算されるため、ロボットシステムの汎用性が高くなければ、高得点は望めません。

競技に使われるロボットは、川崎重工などのスポンサー企業が貸し出す産業用ロボットも含まれます。そのため、現場の第一線で実際に活用されているロボットが競技で活躍する様子も見どころのひとつです。

このようにかなり難易度が高い競技。これを各チームがどのようにクリアするのか注目です。

ロボット革命の実現に向けて

横小路教授は、これまでのロボット業界を振り返り、研究者と産業界の連携が不十分だったと指摘します。

「研究者は面白いことを追求しがちですが、産業界にとっては理論だけでは不十分で、実際の社会で活用できるものを求めています。その点は我々研究者にとっては反省点です。今後は産業界と連携し、将来に向けた課題解決をしていく必要があります。産業界の堅実なシステムと研究者の斬新なアイデア。両者をうまく結合できれば、すごいロボットができる。研究者と産業界の連携を促し、イノベーションを起こしたいと考えています」(横小路教授)

そして、横小路教授はその起爆剤としてWRSに期待を寄せます。

「WRSのものづくりカテゴリーのスローガンは『迅速な一品ものづくりを目指して』です。現状では、一品ものは人が作ることが多いですが、一品ものでさえ、迅速かつ無駄のない段取り替えで対応できるようなロボットシステムを目指そうというものです。

これは2020年でもまだ実現は難しいかもしれません。しかし、ものづくり分野でのロボットの活躍の範囲を大きく拡大することにつながります。このように、WRSでは競技会を通して次世代のものづくりのありかたを追求していきます」(横小路教授)

ロボットは現在、自律化、ネットワーク化といった大きな技術変化の中にあり、米国や中国の存在感も増しています。日本だけでなく、世界的にロボットへの関心が高まり、ロボットを取り巻く環境が進化を続ける中、ロボットの活躍の場がすぐそばまで来ています。WRSは、そんな近い将来を体験するきっかけになるかもしれません。みなさんもWRS2018に実際に足を運んで、これからの未来を担っていくであろうロボットの活躍をご覧になってはいかがでしょうか。

World Robot Summit(ワールドロボットサミット)公式サイト

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