川崎重工の西神戸ショールームに潜入! ロボットの活用事例をレポート

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ロボットはどんな作業をしている?

産業用ロボットは近年テレビに登場するなど、目にする機会は増えてきたかも知れません。では、ロボットの実際の作業現場はどうでしょうか。ロボット大国の日本とはいえ、ロボットが導入された工場での勤務経験でも無ければ、ほとんど馴染みが無いのが実情です。

今回は、川崎重工・西神戸工場内にあるロボットショールームの内部をご紹介します。このショールームでは、ロボットの現場での活用シーンを忠実に再現しており、川崎重工の産業用ロボットがどんな作業ができるのか、一通り見学することができます。では、実際の産業用ロボットの活躍を見てみましょう。

一般非公開のショールームに潜入!

川崎重工の西神戸工場は、兵庫県神戸市西区にあります。ここでは油圧機器や舶用機械などに加え、ロボットも生産しています。ご紹介する大規模なショールームはロボットの工場内に常設されており、ショールームスタッフの案内により、様々な産業用ロボットを見ることができます。
※導入検討中の企業向け施設のため、一般公開はされておりません。

ロボット工場に入ると、中2階からショールームを一望することができます。ロボットのアーム部分を伸ばした状態で3メートルを超えるような大型のロボットが、これだけ多数、同時に稼働している姿はまさに圧巻です。

密集配置で省スペース化!自動車ボディの組立工程

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現在産業用ロボットの活用が最も進んでいる現場は自動車の製造現場です。このショールームでも、最初に目にするのは、自動車ボディの組み立てライン。このブースで使われているBシリーズCXシリーズは、スポット溶接向けの主力ロボットです。

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上の写真の右側部分に設置されているのがBシリーズとCXシリーズのロボットです。赤く囲んである部分の手前側と奥側のロボットでは、それぞれ車種が異なる自動車ボディへの作業を行っています。配置の仕方が異なり、手前には左右に2台ずつ計4台の配置、奥には左右に6台ずつ計12台のロボットが密集して配置されていました。また、車体の下部には、ボディの位置決めを行うロケーターというロボットも設置されています。ロケーターが自動車ボディの位置を調整することで、ひとつのラインで複数車種に対応でき、車種切り替え時の治具変更が不要となるため、大幅なコスト削減が可能となります。

手前の4台はCXシリーズ。中国・蘇州にある”ロボットがロボットを作る工場”で生産されています。アームが軽量で、最新防振制御システムを搭載しているので、スポット溶接特有の短ピッチ動作でも、連続する溶接箇所の間を高速で移動し、溶接箇所ではピタッと止まって作業することができます。

後ろに配置されている12台がBシリーズ。アームが中空構造になっており、ケーブル類を内蔵することによって隣接したロボットとの干渉を回避できます。また、ベースをスリムにすることで狭いスペースに設置できるので、多数のロボットを密集配置することが可能です。これにより、製造ラインの長さを3分の1まで短縮でき、設置スペースや周辺システムの構築などにかかる費用も大幅に削減できるようになりました。コストダウンのためには、様々な工夫がされているんですね。

溶接技術そのものも進化している

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自動車の製造において、ボディを組み立てる際の溶接箇所は数千にも上るため、溶接は重要な工程です。この工程に対して川崎重工が開発した、フリクションスポット接合(FSJ)という接合方法をご存じでしょうか。FSJは、ロボットに持たせた接合ツールで金属の板をはさみ、圧力を加えながら高速回転して摩擦熱を発生させることで、軟化した材料が一体化するという方式。アルミニウム合金等の接合に向いていて、自動車工場ではボンネットなどに使われています。このFSJを行っているロボットも、先程ボディ組み立てラインで紹介したものと同じCXシリーズです。

下の動画では作業対象物をセットした後に、ロボット自身でハンド(人間でいう手先の部分)をFSJガンに持ち替えています。

先程のFSJガンを使用してドリルのように高速回転し、摩擦熱で接合するフリクションスポット接合(FSJ)を行っています。

また従来のスポット溶接で必要だった溶接用の電源ケーブルや冷却用のホース、大電流が不要となるため、設備費用やランニングコストを大幅に低減できます。

重労働もロボットで自動化!最大500kgの荷物の積み降ろし

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一度にたくさんのビールケースを運んでいたのが、パレタイズ(荷物の積み降ろし)用のCPシリーズ。驚くのは、そのキビキビとした動きの速さです。左の「CP180L」は、1時間に2,050回という搬送能力を持ち、同クラスでは業界最速とのこと。これがどのくらい速いかというと、130kgの物を持ちながら、上下40cm、幅2mの距離を2秒で1往復できてしまうくらいのスピードです。見ているだけで腰が痛くなりそうな作業ですが、もちろんロボットなのでそんな心配はいりません。

下の動画ではロボット「CP500L」が、ビールケースを9個同時に運んでいます。

右のCP500Lは、可搬質量が500kgもあります。CP180Lがビールケース3個だったのに対し、CP500Lは9個も運ぶことが可能。デモはビールケースの運搬でしたが、ハンドを用途に合わせて個別に開発することで、様々な荷物の運搬に対応することができます。

商品を認識し、長時間作業でも素早くミスなく仕分け

パラレルリンク型のYシリーズは、高速ピッキングロボットです。デモでは、ビジョンカメラで画像認識を行い、3種類の形(○△□)ごとに整列したり、サイコロを1から6の出た目の数ごとに正確に分類したりしていました。実際の導入現場では、このような複数商品の純粋な仕分けに加えて、同一商品の中から不良品を判定し分類する作業も行っています。

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ベルトコンベアでたくさん流れてくるパーツを、○△□の形別に正確に整列しています。

 

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3台のロボットがそれぞれ、1と2、3と4、5と6の目が出たサイコロのピックアップを担当していました。

こうしたパラレルリンク型のロボットは、小さなものを高速で整列するのに適しています。単調な作業を高速で行う場合、人間ならうっかりミスをしてしまいそうですが、ロボットなら集中力が切れることはありません。現在のYシリーズは、食品・薬品・化粧品の、いわゆる「三品」産業と呼ばれる分野で多く活躍しています。

ロボット同士が協力し合いながら念入りに塗装

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こちらのブースでは、塗装用のKシリーズが動いていました。自動車ボディの塗装には、外側と内側を塗装する2つの工程があり、ここではロボットのアームに付けた治具でドア、ボンネット、トランクを開閉しながら、4台のロボットが車体の内側と外側の塗装を行っていました。各ロボットには塗装ガンが取り付けられており、車体パーツの開閉と塗装という1台2役を担当しています。ロボットが協調しながら作業をしており、塗装の大部分をロボットのみで行っていました。このロボットは実際の自動車工場現場に導入されています。

下の動画では前のロボットが後部ドアを開け、後ろのロボットが内側を塗装しています。

人との共存!双腕スカラロボット「duAro」の調理デモ

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最後のブースでは、双腕スカラロボット「duAro(デュアロ)」が紹介されていました。ここまででご紹介したロボットと大きく違うのは、duAroは人間と一緒の現場で働くことを前提に開発されたということです。モーター出力を抑えているので、安全柵は不要。duAroには衝突検知システムが付いており、人間に接触した場合は即座に停止するようになっています。また、アームには柔らかい素材が使われているので、万が一当たっても痛くありません。下部にはキャスターも付いており、一人でも簡単に移動させることができます。電源とクーラーボックスサイズのエアーコンプレッサーをつなげば稼働できるので、ロボットを置けるスペースが限られる場合でも容易に導入できそうです。

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デモでは、寿司を握ったり、ピザを焼いたりする動きを披露していました。このように両手を連携する仕事ができるのは双腕ロボットならでは。食品業界でも、ロボットによる自動化が進展しているので、近所のスーパー店頭やレストランで見かける日も近いかもしれません。

こちらはduAroが手際よく寿司を握っている動画です。

お台場には一般向けショールームも

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ロボットは様々なところで使われ始めています。従来主流だった自動車産業や電子・電気産業だけでなく、ほかの産業でも利用が拡大。更に、共存型ロボットの登場により、今後は工場を飛び出し、商業施設や家庭での利用も増えていくでしょう。

冒頭でも触れたように、西神戸工場のショールームは一般には非公開ですが、東京・お台場には一般向けのショールームとしてKawasaki Robostageを用意しています。ここでは最新のロボットの見学や、ロボットによるアトラクションの体験ができます。予約は不要で、入場は無料。ぜひ足を運んでみてください。

Kawasaki Robostage
https://robotics.kawasaki.com/ja1/robostage/