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社会の変化から見る ロボットの過去・現在・未来

深刻化する労働力不足

現在、日本は世界でも類を見ない少子高齢化社会に突入しようとしています。日本の総人口は、2008年の1億2,808万人をピークに減少を始め、毎年数10万人規模で減り続けています。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(平成29年推計)」によれば、2053年には1億人を下回る見込みとなっています。

この結果懸念されているのが、労働力不足の深刻化です。15~64歳の生産年齢人口は、2015年には7,728万人でしたが、前述の推計によれば、2029年に7,000万人を割り、その後、2040年には6,000万人以下、2056年には5,000万人以下まで減少すると言われています。

日本はすでに、高齢化率(総人口に対する65歳以上の割合)が世界最高水準となっており、今後さらに進行します。65歳以上の人口は、2015年には4人に1人(26.6%)、2036年には3人に1人(33.3%)にまで上昇。生産年齢世代にかかる負担は日に日に大きくなっているのです。

生産年齢人口と高齢化率の推移(※)

※生産年齢:15歳~64歳、高齢化率:総人口に対する65歳以上の割合
出典:国立社会保障・人口問題研究所ホームページ
出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)、我が国の推計人口(大正9年~平成12年)より作成

この不足する労働力をどうやって補っていくのか。その対策として、いま大きく期待されているのがロボットの活用です。

【過去】これまでの産業用ロボットとその課題

長らく日本は「ロボット大国」と呼ばれてきました。その象徴とも言えるのが、ものづくりの現場を支える産業用ロボットです。ロボットによる自動化によって少ない人数でも製造ラインを動かせるようになるため、自動車産業を中心に普及し、ハンドリング(運搬)や溶接、塗装など、さまざまなシーンで産業用ロボットが活躍し、過酷な環境下での作業から労働者を解放する役割を果たしてきました。

しかし、産業用ロボットはハンドリングや溶接などの単純な動きを得意とする反面、職人技と呼ばれるような、熟練の技術者の感覚的な作業などは苦手です。製造業でも導入は一部に留まっており、多くの作業はまだまだ人手に頼るしかありません。

製造業従業員1万人あたりの産業用ロボット利用台数(2016年)

出展:国際ロボット連盟、World Robotics 2017

また、作業者の安全確保のため、ロボットと人間が同じ場所で作業することが難しく、ロボット専用のスペースが必要という点も、ロボット導入の障壁となっていました。ロボットと人間との間に安全柵を設置するなど、運用上の制約も大きいため、柔軟な製造ラインの構築が難しかったのです。

使い勝手の面でも課題がありました。産業用ロボットを動かすためには、ティーチングと呼ばれるロボットに動作を教えるプログラミング作業が必要です。これは専門知識を持ったエンジニアが行うのですが、プログラミング自体の作業量も多いため、大量生産品でなければ作業に費やす時間やコストに見合わず、短いスパンで商品が変化するものなどには向きません。

このような制約から、特に十分な作業スペースを確保できない場合や、小ロットで複数の商品を製造している企業では、ロボットを導入したくとも断念せざるを得ない状況だったのです。

【現在】製造業以外への普及が進む

産業用ロボットの需要を牽引してきたのは自動車産業や電子・電気産業ですが、近年はほかの様々な産業分野にも普及が進んでいます。

その後押しとなったのが2013年に行われた規制緩和です。これまではロボットを安全柵で囲い、隔離されたスペースに設置する必要がありました。しかし、規制緩和によって、一定の安全基準を満たすことで、人とロボットが柵を隔てずに同じ空間で協働することが可能になったのです。これまで十分なスペースがなく安全柵などの設置が難しかった企業でも、導入がしやすくなりました。

前述の規制緩和により、川崎重工の双腕型スカラロボットの「duAro(デュアロ)」なども登場しました。duAroは人の作業スペースとほぼ同じ広さのスペースで、人間と並んで作業ができる人共存型のロボットです。これにより産業用ロボットの導入のハードルを大きく下げることができました。また、技術の進化に伴い、人間が両手を使って行う組み立て作業なども可能になりました。例えば、ロボットが片方の腕で容器を押さえて位置を決め、もう片方の腕でその容器に蓋をすることもできます。画像認識などの最新技術を採用することで、作業対象の物体が乱雑に置かれていても、その位置を正確に認識し、掴む、運ぶといった作業を行うことができます。

片腕でおにぎりを正確に掴み、もう片方の腕で番重詰め作業をするduAro

このように産業用ロボットの進化により、自動車や電子・電気産業以外でも工場の自動化が加速しています。「三品産業」と呼ばれる、食品、化粧品、医薬品産業などもロボットの導入が進んでいくとされている分野です。

国際競争力を高めるためには、自動化によるさらなる効率化が不可欠で、今後は製造業の現場でロボットによる自動化がより進展すると考えられています。2017年に川崎重工が発表したロボットシステムの「Successor(サクセサー)」は、「師匠の仕事を見て弟子が技を学ぶ」というように、現場の技術者が実際の作業を通して、ロボットに動作を教え込むことができます。

こういった新しいシステムにより、プログラミングの難解さなどの産業用ロボットの課題を解決し、まだ自動化ができずにいた作業領域にもロボット導入が可能になります。より使いやすいロボットが次々に登場し、これまでロボットを活用できていなかった中小企業の少量多品種生産でも、導入が進むことが期待されています。

iREX2017で展示されていたSuccessor(サクセサー)

【未来】産業分野から私たちの生活へ

ロボットの活躍は産業だけに留まらず、その範囲は今まさに拡大しつづけています。例えば、ソフトバンクのコミュニケーション型ロボット「Pepper」は、家庭向けのほか、ビジネス向けにも展開され、家電量販店での接客や、ホテルのコンシェルジュ等でも活躍しています。

かつてペットロボット「aibo」を販売していた日本の大手家電メーカーであるソニーも2018年、12年ぶりに新しいaiboをリリースし、大きな話題になりました。現在は、ソニーのような世界的な大企業だけではなく、ベンチャー企業などもさまざまなロボットを開発・製造しており、新しい製品やサービスが続々と登場しています。

近年、ロボットの姿形も変化しつつあります。これまで人間の腕を模した1本腕の構造が主流だった産業用ロボットと異なり、新しく開発されているロボットは動物や人の形を模したものが多く見られます。

ロボットが動物や人の形をしていると、それだけ親近感も湧くため、Pepperやaiboのように人とコミュニケーションをとることに重きを置いたロボットが多く見られます。しかしロボットが人の形をしていることは、単純な親近感といった観点からだけではなく、より実用的な面からも人に身近な存在になるのです。例えば通路の幅、階段の段差、ドアノブの位置など、現在私たちが生活する環境は我々のサイズや動きを基準に人間が使いやすいように作られています。ロボットが人間と同じサイズで同じように動くことができれば、人間が生活する環境での作業が可能となるのです。

それを突き詰めていくと一つの方向性として、危険な環境で人間に代わって働くことができるようになります。具体的な例としては災害現場や事故現場での対応があります。これまで研究されてきた災害対応ロボットはクローラ(カタピラ)で移動するタイプが多かったのですが、人型のヒューマノイドロボットであれば、ロボットに合わせて環境を整備する必要なく、人間が普段生活する環境に適応し作業をすることができます。人間のように梯子を使って移動することができるので、火災現場に入ることも可能です。さらに人間用の耐火服をそのまま装着し、ロボットの耐久性を高めることもできます。こうした汎用性の高さは災害・緊急時の大きなメリットになります。

川崎重工と東京大学の稲葉教授が共同開発中のヒューマノイドロボット

画像認識、音声認識、空間認識、AI学習、センサやアクチュエータといった、ロボットを構成している要素技術が飛躍的に進化したことで、ロボットがより広い分野で活躍するための準備が整いつつあります。今後は、さまざまな分野で労働力不足を補ったり、負担の大きい作業を肩代わりしたりと、多様なロボットが登場してくるでしょう。人間の生活も今より便利なものになっていくと想像されます。

より身近な存在になっていくロボット。例えば川崎重工の新しいヒューマノイドロボットが世界中の家庭で一般的な存在になり、料理、洗濯、掃除などの日常生活のさまざまなシーンで人間をサポートしてくれる――そんな未来も遠くないかもしれません。

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